「好きなもの」と「需要」のズレをどう扱うか——創作テーマ選定の現実論

イラスト
創作活動のイメージ

はじめに:なぜ”好きなものだけ描く”は苦しくなるのか

こんにちは、bakです!

「好きなものを描いているのに、全然見てもらえない」 「自分の作品に自信があるのに、反応がゼロに近い」

創作を続けている人ほど、こうした体験に直面します。2025年現在、SNSの環境は大きく変化しています。Xは運営のルール変更により荒廃が進み、おすすめアルゴリズムによってユーザーが情報を受け取る相手を選べなくなってきました。以前は10万いいねを獲得できていたイラストレーターが、現在は1万いいね程度で止まってしまうケースが増えています。

このような環境下で、多くの創作者が「好きなものを描いているのになぜ評価されないのか」という矛盾に苦しんでいます。

本記事では、**迎合でも自己満足でもない「現実的な折衷思考」**を整理します。好きなものを殺さず、かつ持続可能な創作を続けるための戦略を、2025年の最新情報を踏まえて解説していきます。


創作者が陥りやすい2つの極端な思考

創作テーマを選ぶとき、多くの人が次の2つの極端な思考のどちらかに偏りがちです。

パターン①:需要を無視して好きなものだけ描く

メリット:

  • 創作の喜びを純粋に味わえる
  • 自分のスタイルを確立しやすい
  • 作品に一貫性が生まれる

限界:

  • 認知されるまでに時間がかかりすぎる
  • モチベーション維持が困難
  • 収益化の道が見えにくい

Xでの反応数は、純粋に作品を好きと思ってくれた人による「実力票」と、交流している人からの「交流票」を足した数になります。つまり、実力だけでは届きにくいのが現実です。

パターン②:需要に全振りして自分を殺す

メリット:

  • 短期的な反応を得やすい
  • 収益化しやすい
  • フォロワーが増えやすい

破綻点:

  • 創作が苦痛になる
  • バーンアウトのリスク
  • 個性が埋もれて代替可能な存在になる

需要のあるイラストジャンルを把握していないと、収益を得られない可能性があります。しかし、需要だけを追いかけると、自分らしさを失い、結果的に持続できなくなります。

創作の方向性

「好き」と「需要」は対立概念ではない

多くの創作者が「好き vs 需要」を対立軸で捉えていますが、これは誤解です。

実際には、好きと需要の関係は次のように捉えるべきです:

  • 重なり: どの程度重なっているか
  • 距離: どれくらい離れているか
  • 角度: どの方向から近づけるか

テーマ選定は感情論ではなく、設計論で考えることができます。

2025年の創作環境では、SNSプラットフォーム自体が「居場所の多様化・細分化」という潮流にあります。つまり、あなたの「好き」と共鳴する人々が集まるニッチな場所が、以前より見つけやすくなっているのです。

参考記事:創作好きにオススメのSNS・7選!オンライン交流をもっと楽しく!


中間戦略①:好きな要素を”需要の型”に載せる

テーマ全体を迎合するのではなく、構造だけ需要側に寄せるという発想があります。

具体的な方法

ジャンルの枠を借りる

  • 好きな「世界観」を、需要のある「ファンタジー」に載せる
  • 好きな「キャラクター造形」を、人気の「Vtuber風デザイン」に応用する

Vtuberのアバターやゲームキャラクター、アプリのナビゲーションキャラクターとして利用される動きをつけられるイラストの需要が増えています。

フォーマットを借りる

  • ストーリーの「語り口」だけを流行のスタイルに合わせる
  • 投稿の「見せ方」をTikTok風の短尺にする

表現文脈を借りる

  • 季節のイベント(ハロウィン、クリスマスなど)に合わせる
  • 時事ネタと絡める(ただし自然に)

中間戦略②:需要のある題材に”自分の視点”を差し込む

流行テーマをそのままなぞるのではなく、視点・切り口で差別化する戦略です。

個性が出るレイヤー

  1. 解釈: 同じキャラクターでも、あなたならではの解釈
  2. 感情: どんな感情を込めるか
  3. フェチ: どの部分にこだわるか(手、表情、髪など)
  4. 構図: 見せ方の工夫
  5. ストーリー: 1枚の絵に込めた物語

トレンドを意識することで、他のクリエイターと差をつけることができます。「この人にお願いしたい!」と思ってもらえる確率が上がります。

2025年のトレンド例

  • ノスタルジックな色彩: 90年代風の色使い
  • ミニマル×エモーション: シンプルだけど感情的
  • 日常の詩的切り取り: 何気ない瞬間の美しさ

参考記事:2025年最新版|フリーイラストレーターが稼ぐために絶対知るべき最新トレンド完全ガイド


中間戦略③:創作ポートフォリオを分けて考える

すべての作品に同じ役割を求めないという発想が重要です。

作品の役割分担

役割目的
集客用フォロワーを増やすトレンド題材、バズりやすいテーマ
実験用新しい表現を試す技法の練習、新ジャンルへの挑戦
純粋に好きなもの用創作の喜びを味わう誰に見せるでもなく描きたいもの
収益用仕事として成立させる依頼を受けやすいポートフォリオ

一つのサービスですべてを満たすことはできません。自分が何を優先するかを決め、その目的に合ったSNSを使い分けるのが現実的です。

心理的負担を減らす設計

「今日はInstagramに映える作品を投稿しよう」 「明日は個人サイトに自分の世界観を全開にした作品をアップしよう」

このように役割を分けることで、「迎合している」という罪悪感や**「評価されない」というストレス**を軽減できます。

創作のポートフォリオ

需要の”誤解”を解く:数字は答えではなくヒント

数字だけを見る危険性

  • いいね数が少ない = 作品が悪いとは限らない
  • バズった = 需要があるとも限らない

アルゴリズム自体が変わっており、Tips(描き方講座)はインプレッションは増えるけれど、保存やリポストが少なくバズにつながらないことがあります。

数字の裏にある文脈

  • 投稿時間: いつ投稿したか
  • アルゴリズムの変化: プラットフォームの仕様変更
  • タイミング: 他の話題との競合
  • フォロワーの質: 数より関係性

短期と長期を分けて考える

  • 短期の反応: バズ、いいね数
  • 長期の評価: 継続的なファン、仕事の依頼、影響力

本当に大切なのは後者です。短期の数字に一喜一憂せず、長期的な視点で創作を続けることが重要です。


テーマ選定で迷ったときの思考チェックリスト

創作テーマを選ぶとき、次の質問を自分に投げかけてみてください:

自己理解の質問

□ このテーマで1年間続けられるか?

□ 誰にも評価されなくても描き続けられるか?

□ このテーマは自分の「コア」と繋がっているか?

需要理解の質問

□ このテーマを求めている人はどこにいるか?

□ 似たテーマで成功している人の特徴は何か? □ このテーマは5年後も需要があるか?

折衷点の質問

□ 70%自分らしさ、30%需要の配分になっているか?

□ この選択は「逃げ」ではなく「戦略」か? □ 自分が誇れる選択か?

創作の思考

実践例:ズレを抱えたまま続けている創作者のケース

ケース1:イラストレーターAさん(フォロワー3万人)

好きなもの: 幻想的な風景画 需要: キャラクターイラスト

戦略:

  • 週5日はキャラクターイラスト(集客・収益)
  • 週2日は風景画(自分の世界観)
  • 風景画にキャラクターを小さく配置して融合

結果:

  • フォロワーは着実に増加
  • 風景画の個展も開催できた
  • 「Aさんといえば風景」というブランディングに成功

ケース2:漫画家Bさん(同人作家)

好きなもの: 哲学的なテーマの一次創作 需要: 人気アニメの二次創作

戦略:

  • コミケでは二次創作で集客
  • 個人サイトでは一次創作を展開
  • 二次創作の中にも自分の哲学を忍ばせる

結果:

  • 二次創作ファンが一次創作も読んでくれるようになった
  • 商業デビューのオファーが来た
  • 「二次創作から入って一次創作にハマる」という導線に成功

ケース3:VTuberデザイナーCさん

好きなもの: 和風デザイン 需要: ポップで明るいデザイン

戦略:

  • ポップなデザインに和の要素を少しずつ混ぜる
  • 「和モダン」という新しいジャンルを開拓
  • SNSで和文化の豆知識も発信

結果:

  • 「和モダンVTuberデザインならCさん」というポジション確立
  • 海外からの依頼も増加
  • 好きな和風デザインを仕事にできるようになった

おわりに:ズレは欠点ではなく”設計対象”である

好きなものと需要のズレは、消すものではなく、扱い方を決めるものです。

中間戦略を取ることは妥協ではなく、持続可能性の選択です。

2025年現在、クリエイター収益型SNSやサブスクリプション機能を持つプラットフォームが増え、創作者がファンと継続的な関係を築きながら収益化できる環境が整ってきています。

最後に伝えたいこと

  • 完璧な一致を求めなくていい
  • 70%の重なりがあれば十分
  • 戦略的に考えることは、創作を裏切ることではない
  • あなたの「好き」は、必ず誰かの「好き」と繋がる

次の作品テーマを選ぶとき、「好きか需要か」という二択ではなく、「どう組み合わせるか」という視点で考えてみてください。

あなたの創作が、持続可能で喜びに満ちたものになりますように。


関連リンク・参考資料


この記事があなたの創作活動の一助となれば幸いです。ブックマークやシェアもお待ちしています!

コメント

タイトルとURLをコピーしました